㈱菓業食品新聞社

お菓子の業界紙

京菓子資料館 「諸国菓子めぐり」

   

「諸国名物菓子集」

 京菓子資料館(上京区、俵屋吉富烏丸店隣接)では、9月14日(木)~12月24日(日)、「諸国菓子めぐり―全国菓子博覧会と京の工芸菓子」展が行われている。
 工芸菓子(糖芸菓子)と、「諸国名物菓子集」をもとに全国の銘菓が展示され、4年に一度行われるお菓子の大博覧会「菓子博」の趣を感じる展覧会となっている。
 「諸国名物菓子集」は俵屋吉富7代店主の石原留治郎氏が編纂した、北海道から沖縄まで全国各地の129点もの銘菓を描いた3巻からなる絵巻物。その一部を展示し、同時に実物の銘菓を取り寄せた。
 同集は、後世に残すため、説明と共に菓子の特徴が緻密に描写されており、そこには「赤福」など有名なものもある一方、知られざる銘菓や、失われてしまった菓子もある。例えば、新潟のはり糸「ありの実」は、梨を使った砂糖菓子だという。また、京都の銘菓も、雲龍、八ッ橋、五色豆など展示している。

京都の菓子

工芸菓子

 会場に展示されてた大きな工芸菓子3点は、姫路、広島、三重の全菓博で俵屋吉富が出品したもの。そのうち、今年の三重博で農林水産大臣賞を受賞した「春秋」は石原当主自らが創案した作品。秋のツツジの紅葉と春の桜、現実には同時に存在しない美しさを表現し目を引く。従来の工芸菓子とは一線を画し、ライティングなども考慮し、ショーウィンドウに展示されることも考えたという。実際、菓子博終了後、大丸京都店の正面玄関や、8月に池袋西武百貨店で行われた「IKESEI 菓子博 」でも展示され、好評を得た。その他、琳派作品をあしらった工芸菓子、制作に用いる道具も展示した。

 来場者からは「工芸菓子がよかった」「旅先で出会った菓子を見て、おしゃべりができる」と好評のようで、それは菓子博の面白さと重なるところがある。