㈱菓業食品新聞社

お菓子の業界紙

福島幸治菓子展 忠臣蔵テーマに

   

 公益㈶有斐斎弘道館(濱崎加奈子館長)では、歌舞伎仮名手本忠臣蔵をテーマとして、12月3日(土)~15日(木)ゴトウ千香子版画展、12月10日(土)~15日(木)福島幸治菓子展が行われた。
 福島氏は昨年、同館主催の「京菓子と琳派展」実作部門で大賞を受賞しており、その記念展でもある。

 福島氏は栃木県足利市の和菓子店「御菓子司 ふくしまや」の3代目主人。イタリアで料理を学んだ経歴があり、家業にもどり5年目だという。洋の要素を入れた創作菓子や、同地の銘仙の柄を取り入れた上生菓子なども手掛ける。展覧会では、芝居の印象的な台詞を菓銘とし、9点のお菓子を創作した。

 福島氏は今回の企画で初めて忠臣蔵に触れ、全十一段を3ヶ月かけて鑑賞した。「台詞を言う登場人物の思いをお菓子に落とし込んだのだが、それは難しい作業だった。1つ1つのお菓子がこの5年間の集大成だ」と語った。

鮒だ、鮒だ、鮒侍だ (三段目 高師直)


五十両(五段目、斧定九郎)


髪や飾りや化粧して (七段目 寺岡平右衛門)

 例えば「この通りにさっぱりと遊ばせ(二段目、加茂川本蔵)」は、松を切って見せる場面を、袱紗に切れ目を入れ表現した。「五十両(五段目、斧定九郎)」では、殺して奪う五十両を手にした時の一言を、その後の深い因縁を込め、錦玉で表現した。

 11日(日)に行われたゴトウ、福島両氏による作家トークで、福島氏は「仕事では朝生菓子など様々なもの作っているが、自分の思いを一番表現できるのは上生菓子だと思っており、今回は自分にとってよい『スタート』を切れた。もっと自分に問いかけ、それを作品にしていきたい」と抱負を話した。

 同館では、毎年秋に一般公募による京菓子展を開催。大賞の副賞として、展覧会や茶会等を行っている。