㈱菓業食品新聞社

お菓子の業界紙

モロッコ産「キャロブ」 チョコの風味と優しい甘味

   

37company 田畑社長

 37company合同会社(滋賀県大津市、田畑里佳社長)はモロッコ産「キャロブ」の食品ブランド「シスターズフェイバリット」を展開している。

鉄分、食物繊維が豊富なスーパーフード

 「キャロブ」とは地中海地方などに生育するマメ科の植物で、さやの部分に優しい甘味と、チョコレートの風味がある。
 また、カフェインレスで、ごぼうの5倍と言われる食物繊維、ほうれん草同等の鉄分のほか、含有する「ピニトール」は血糖値を調整するといわれ、ヨーロッパではスーパーフードとして注目されている。

キャロブパウダー

モロッコ在住の姉とブランド立ち上げ

 シスターズフェイバリットが、下京区の四条河原町GOOD NATURE STATION1階のマーケットに出店しているおりに取材し、田畑氏に話を伺った。

 同ブランドは、モロッコ産キャロブの魅力を伝えようと2018年にスタート。
 モロッコに在住し、現地で仕事創出などの社会活動をしている、田畑氏の姉・蒲地里奈氏からキャロブの販売を手伝ってほしいと言われたところから始まった。
 キャロブは現地に自生しており、その収穫からパウダーに加工するところまで現地で行い、それを取り寄せ、大津の作業所等で商品に加工している。

グラノーラ、クッキー、パン、キャロットケーキ、カレー、あんころ餅‥‥

 商品はキャロブパウダーの他、その特徴を生かした身体に優しい商品を展開している。
 グラノーラは有機オーツ麦や各種ナッツにキャロブパウダーがまぶしてあり、砂糖不使用で糖質制限中の人にも適している。クッキーでは蜂蜜とキャロブで優しい甘さを表現したり、キャロブチップを使用したビスケットもある。

グラノーラ de キャロブ

 「姉からキャロブを紹介され、自分で試してみると、産後にカフェインが取れないときにぴったりだった。ココナッツオイルと合わせるとチョコレートのようになる。そのほか、パウンドケーキ、キャロットケーキ、パンが定番。カレーに入れてもおいしい。あんにいれて、あんころ餅を試作してもらったこともある」と話す。
 「オーガニック系の見本市に出店しても、キャロブを知ってる人は10人に1人ぐらいで認知はまだまだ。菓子業界のみなさんにも知っていただき、活用してほしい。パウダーは業務用として卸売もできる」とのこと。

小麦袋を刺繍でアップサイクル

蒲地里奈氏

 同日、蒲地氏がGOOD NATURE STATIONの3階で、同氏が手掛けるDAR AMALブランドのバッグを販売しており、詳しく現地の様子について聞くことができた。

 蒲地氏とモロッコの出会いは、2010年にJICAの青年海外協力隊員として内陸部ムーレイ=イドリスという街のシングルマザーらの支援に入ったのがきっかけ。伝統的な「フェズ刺繡」の技術をもつ女性たちに、適正な賃金を払って商品を作ってもらい販売する活動を始めた。
 JICAの期限が終了しても、同地に残り、個人的に活動を続け、DAR AMAL(意味=希望の家)を立ち上げる。

 蒲地氏は同地にたくさんある小麦の袋に注目し、そこに刺繍を施した丈夫で美しいバッグを発案した。不要品のアップサイクルにもなり、生地を入手する苦労もなく、目が粗いため視力が弱った高齢者も仕事ができる。

キャロブ、大地と太陽が育てる

 キャロブとの出会いは、子どもに「これ、チョコレート」といって渡されたのが最初だったという。

キャロブ

 現地では薬としてそのまま食べたり、ドリンクや伝統的な菓子に使われている。調べてみるとヨーロッパで健康食材として注目されていることを知った。きちんとその価値をもって流通させることで、若い男性の仕事の創出になると思った。
 キャロブは周辺の広大な土地に自生しており、大地と太陽と雨が育てる。収穫期は7~8月で、シートを広げ落として収穫する。そのころになると日の出から日没まで、一斉に街から人がいなくなり収穫にでかけ、壁のように積み上げられる。
「大地に根付いているものなので、日本で手に入る(ヨーロッパ産の)キャロブとは質が違う」と語る。

キャロブの木(シスターズフェイバリットのサイトより)

ものを通して伝えていきたい

 「現地は物や仕事が少なく、過酷な環境ではあるが、豊かな時間がながれている。人々は優しく、分け与えるという文化が根づいており、支援という形で入ったが、自分が救われていると思う。
 現在コロナで行けなくなっているが、日本とモロッコ、半分半分行き来する生活が自分には合っている。
 ものを手でつくることには幸せがある。日本でも作業所に商品作りをお願いしているが、仕事が生まれることで作り手もハッピーになる。シスターズフェイバリットも、DAR AMAL同様、ものを通して現地のことを伝えていきたい」と話す。

 同ブランドについて、詳しくは https://www.sisters-favorites.com/