㈱菓業食品新聞社

お菓子の業界紙

鶴屋𠮷信、本店隣に落ち着きのカフェ

      2019/07/01

 鶴屋𠮷信は新業態カフェtubara cafeを2月4日、本店の隣(上京区堀川通今出川角)にオープンさせた。白を基調としたゆったりした12席のカフェは、大きな窓から見える庭が美しく、交差点の喧騒から数歩入っただけで現出する落ち着きの空間となっている。

 用意されているお菓子は、鶴屋𠮷信の銘菓「つばらつばら」をアレンジしたものと、薯蕷饅頭の「巣ごもり」など。セレクトしたコーヒー、紅茶、ほうじ茶などと一緒に楽しめる。

「つばらつばら」

 カフェオーナーの稲田繭貴氏は、和菓子の良さをもっと知ってもらえるようなカフェの構想をあたためていた、という。
「普段の生活の中にもっと和菓子があったらよいと思う。若い人の間では選択肢に入っていないのではないか。例えばコーヒーをいただくときに、クッキーやケーキではなく、和菓子も候補にしていただけないか」と話す。

 また、和菓子を贈るという習慣が生活の中になくなっていることに危機感を持つ。
「結婚式の引出物も、カタログになってしまっている。それは合理的かもしれないが、選ぶということには贈る人の気持ちが入っている。お菓子に大切な気持ちをのせることが忘れられているのが残念だ」と語る。

「巣ごもり」

 カフェで提供する「巣ごもり」は、もともと鶴屋吉信にあった菓子だという。
 卵型の薯蕷饅頭で、鶴が巣で大切に守る卵を意味し、末永い愛情を伝えるお菓子として引き出物などにも使われていた。しかし需要が減り、本店のラインナップから消えてしまった。
 「お客さまには、このお菓子の由来などを話し、草の根から和菓子のファンを増やしたい」とのこと。

 カフェで出す「つばらつばら」は同店銘菓にアレンジを加えたもの。外側の焼き皮は本店と同じものを使い、餡も本店のものにマスカルポーネとそれぞれ3種のフレーバー(抹茶、柚子、ラムレーズン)を加えている。2つ選んで飲み物とセットで1000円で提供している。
 その他、生地に白餡を練り込んだシフォンケーキや、夏に向け、和菓子の素材を使用したパフェも考えている。
 また、持ち帰りとして、地元・西陣を象徴する糸巻の意匠の和三盆などを組み合わせた干菓子のセットも用意している。

 カフェオーナーは「和菓子が大好きなお客さん目線で考えてきた」と話す。
 それがプロの完成した仕事と、どこか手作りの優しさが同居するこのカフェの魅力になっているように感じる。例えばイスもひとつひとつ北欧のヴィンテージのものを揃え、エプロンはオーナーの友人が作ったもの。カフェを飾る花は近所の方に持ってきていただくのだという。
 「ここをきっかけとして、本店のお菓子を楽しんでいただけるようになればうれしい。若い人に和菓子の魅力を広げていきたい」と語る。