㈱菓業食品新聞社

お菓子の業界紙

エリザ 新製品で再スタート

   

 4月上旬、JR環状線寺田町から徒歩5分ほどの距離にある焼菓子製造の㈱エリザを訪ねた。4階建てビル1階の事務所の扉を開けると、食品白衣と衛生帽子を着用した大森良真社長が「いらっしゃい」と温かく歓迎してくれた。
 事務所には大森社長の他にも3人の従業員がいて、2人はパソコン作業を続けている。もう1人の従業員は営業担当なのだろうか、大森社長と黒板に書かれたスケジュール表を見ながら、日程の確認をしていた。どこにでもある普通の企業の日常のように思えた。ふと、以前にはなかった「変わらないのは逃げるから。変わるのは挑むから」と直筆で書かれた言葉が、出入り口扉の隣に貼られていたことに気がついた。「今までとは違う」。大森社長の強い意志を知った私は、エリザの未来を少し覗いた気がした。

大森社長

大森社長

 同社が、過去に賞味期限切れの原材料を使っていたことが明るみになったのは、昨年12月のことである。大森社長は今年1月から、抜本的に社内改革を行った。確実な日付管理ができる製造日報へと仕組みを再構築し、さらに原材料の棚卸を月2回行うようにした。原材料の棚卸は従業員全員で実行し、在庫を確認。賞味期限が1カ月未満のものは新たに設けた注意リストに掲載し、それを壁や黒板に貼ることで、全社員が賞味期限が近い原材料について認識を持つようにしている。賞味期限が切れた原材料の処分も全員で確認し、社内の打ち合わせも毎日行うようにしている。さらに4月からはホームページを立ち上げ、新たなスタートをきった。

独自技術で開発に挑む

 クッキー製造メーカーとしても、今までにない新しいことに挑戦している。
 メーカーにはそれぞれ、機械や配合技術に独自性があるが、同社ではパンダクッキーをはじめ、多種類の動物フェイスデザインのクッキーが作れるアイスボックス成型法を基に、厚さ3ミリという異例の薄さで焼く技術を誇る。その超薄焼きクッキーの表面にオリジナルの図柄のプリントも可能で、こういった同社独自の焼菓子技術を付加価値商品として提案し、少しずつ新しい取引先を獲得している。
 大森社長は「もともと持っていた技術を見直して、製造ラインに工夫を加えて可能性を見出した」と言っている。焼菓子メーカー本来の製造の楽しさを感じながら、趣向を凝らして新製品開発に挑んでいる大森社長の話を聞き、前向きに着実な一歩を進んでいる印象を受けた。(文責T)