㈱菓業食品新聞社

お菓子の業界紙

京大で「和菓子で学ぶ化学」

      2018/11/22

 京都府菓子工業組合青年部(島田嘉寛部長)は、左京区の京都大学総合博物館で行われている福井謙一博士生誕百年記念展に協賛し、福井博士の提唱したフロンティア軌道理論を親しみやすく伝える和菓子を制作した。

 同展は「ノーベル賞化学者を育んだ教室―応用をやるには、基礎をやれ」と題され、10月3日 (水)〜 12月9日(日)の期間開催されている。
 同博物館の塩瀬隆之准教授によると、福井博士の業績は理論的で、わかりやすく展示するのに苦労していたところ、京都府菓子工業組合青年部が、「和菓子の科学」を考えていることを知り、逆に和菓子で化学を伝えることもできるのではと感じ依頼したという。
 同青年部では、何度か会合をもって、作品を持ち寄り、相談しながら商品を制作した。

 関連イベントとして、10月27日(土)には京都大学本部構内のカフェテリア・カンフォーラで「和菓子で学ぶ化学」という企画が行われ、約30人の聴衆を前に、島田部長、塩瀬准教授、理論化学者の田中一義名誉教授が鼎談した。
 イベントでは、2種の和菓子が提供された。一つは、六角形のベンゼン環をモチーフにした錦玉羹。もう一つは、六角形が連なるナフタレンの分子構造に合わせ、亀甲印を2つ押した練切。

「和菓子で学ぶ化学」鼎談の様子

提供された和菓子

 島田部長は「亀甲は正月でよく使うおめでたい印で、それを今回使うことができた。概念を見立てて菓子を作ることは初めてだった」と説明。田中名誉教授は「本来この六角形は100億分の1センチくらいの大きさ。その大きさを化学者はグランドほどの広さとして捉える」とのこと。
 島田部長が「和菓子の製造においては、レシピはあっても、結局職人の経験やカン、塩梅がたより。我々は背中を見て覚えろのような教わり方をされてきたが、技術をもっと科学的に伝えることができるのではないか」と話すと、田中名誉教授も「化学の世界も職人仕事の部分があり、まさに福井博士がとりくんだのがそれを科学的に理論づけることだった」と化学と和菓子の共通点に話が及んだ。
 その後、博物館に移動し、展示を観覧した。

福井博士記念展のようす

 同博物館の売店では、「分子構造せんべい」「フロンティアキャンディ」が、企画展示期間の12月9日まで販売されている。
 受講者からは「和菓子が導入となり、わかりやすく面白いと思った」などの感想があった。

京都大学総合博物館で販売されているお菓子