㈱菓業食品新聞社

お菓子の業界紙

飲み込みやすい和菓子 京都の各菓子店が開発

   

 京滋 摂食・嚥下を考える会(荒金英樹代表=愛生会山科病院消化器外科部長)では、5年ほど前から京都府生菓子協同組合(北川清治理事長)研究部と、嚥下和菓子=飲み込みやすい和菓子の開発プロジェクトを続けてきた。ミーティングを重ね試作品について頻繁に意見交換をしたほか、学会での提供や、高齢者に実食していただくイベントの開催など、試行を重ねてきた。
 それらが実り、この6月、京都の各菓子店が開発した6品の販売ルートを確立することができた。

 すべて飲み込みやすさの指標である嚥下食ピラミッドでL2~3の嚥下調整食の枠内に入る。厳選した素材を使用した味や姿にもこだわった京の職人の作る嚥下食として注目される。
 実際の販売は専門家がいる施設などに向け、美濃与食品㈱が行う。

 シンポジウム 上田氏「きちんとした和菓子を」

 また、5月27日(日)には、「『食べる楽しみ』と町づくり―京滋 摂食嚥下を考える会の活動を中心に」とのテーマで、左京区の国立京都国際会館でシンポジウムが行われ、嚥下和菓子の開発に携わった京都府生菓子協同組合研究部の上田孝博氏(葵餅)が演者の一人として壇に立った。第2回全国在宅医療医歯薬連合会全国大会のプログラムとして開催されたもの。

 シンポでは上田氏はこの5年間の嚥下和菓子の取り組みを振り返り、「(喉につまりやすいとされる)餅菓子を作りたいというと最初は笑われた。嚥下食はゼリーのようなものが多い中、きちんとした和菓子にしたい。ミキサーで潰して再形成するのではなく、穀粉から作りたいという思いをもって始めた」と話し、その後の試行錯誤を語った。会場からは原材料の成分や産地についてなど活発な質問が出た。

 当日は、開発メンバーの北川孝大氏(双鳩堂)らも駆けつけ、上田氏が開発した「合わせ餅」のほか、各店の開発した「水ようかん」「さくら餅」「わらびもち」「みたらし団子」5品と、美濃与食品㈱が手がけた「やわらか羊羹」の試食、計1000個を配布した。「やわらか羊羹」は常温保管が可能で、ほかは冷凍保存となる。また、FAXの注文用紙が用意された。

 荒金代表は「販売先は、まずは専門家のいる施設や、在宅でも専門家が対応ところを考えている。施設や福祉医療関係者は、利用者に対するアピールの武器にしてもらえたらと思う」と話す。

 ブランド作りが課題

 今後は、ブランド作りが課題になってくる。
 荒金代表は「摂食障害者向けに和食、和菓子、食器、お酒と開発してきて、それらに共通するマークを作りブランド化を計っていきたい。消費者庁や農水省の認証は個人店で取得するにはハードルが高い。それとは別に京滋の街ぐるみで、府・県、商工、医療介護業界をまきこんで地域のブランドとして作りたい。一部医師会などは事故責任の問題で躊躇するところもある。しかし、どんな食べ物にも100%安全はありえない。皆で議論し解決していきたい」と話す。

 当日は在宅医療の専門家が集まっていたが、在宅栄養管理ステーションもぐもぐ大阪の水島美保氏は「現場では、危ない食べ方をしていて危険な面と、食べたいのに我慢している面がある。指標のはっきりした、おいしい嚥下和菓子を待っている人はいる。念願のものが食べられることで頑張って生きていける」と話す。

商品について詳しくは、美濃与食品㈱まで。
https://www.minoyo-food.co.jp/