㈱菓業食品新聞社

お菓子の業界紙

新型コロナ、京都菓子業界への影響

   

4月の第4週に、京都の菓子関係組合の代表者に、新型コロナウイルスの影響などを電話等でインタビューした。
弊紙が行ったアンケートの結果なども合わせ、京都の菓子業界の現状を報告する。
(主に4月22日号より引用)

概況

八ッ橋売上、3月60%減

京都の菓子業界は苦境に立たされている。
観光都市なので観光客激減の影響は大きい。京都市における年間観光消費額は1兆3千万(2018年)と言われ、京都市民の消費額に対し52%分にもなるが、現在それが全く失われている状況だ。
1月下旬から中国人観光客の減少から始まり、3月はじめの学校休校要請から日本人観光客も激減し、4月はじめ市内大学での感染クラスター発生、さらに4月18日に京都府知事より休業要請が出て、現在観光客ほぼゼロになっている。京都駅や観光地域の多くの土産店も休業になり、販売先自体がなくなってしまっている。
代表的観光土産である八ッ橋業界では、3月売上で60%減となっており、4月に入りますます厳しい。

京菓子、苦境

さらに、3月から始まったイベント自粛、そして、緊急事態宣言を受けての外出自粛で、お茶席の菓子や贈答用の菓子を中心にしていた老舗京菓子店も大きな打撃を受けている。
観光土産に加え、贈答・手土産、お茶席関係、神社仏閣関係、冠婚葬祭とどれも需要がなくなっている。
人との接触を避けねばならないウイルス対策の前に、京都が育んできた菓子の文化性がマイナス要因として働いている面がある。
京菓子店の経営者からは、2月はじめでは「春のシーズンまでに、収まればよいのだが…」、3月はじめでは「3月中で収まれば、なんとかなる」との声を聞いていた。4月では、例年の9割減となっているという店もある。政府の雇用調整補助金等に申請し、休業する従業員を守りながら、耐えようという声をきく。

残るは自家消費と通販のみという状況である。
比較的自家消費の割合の高い、地域の生菓子店、洋菓子店は、売上は大きく落ちておらず、来店者は増える傾向にある。
外出自粛の中、自分や家族の身近な楽しみや和みのために買っているもので、業界にとり喜ばしいことではあるが、全てが自家消費なので客単価は下がっている。

京都府菓子工業組合

今のところは、組合員から新型コロナウイルスの影響で廃業したという話は聞いていないが、今後、廃業が増えることも覚悟しなくてはいけないと考えている。
この問題は収束が見通せない。そして、そこからどのように回復できるのかが大事なところだと思う。現在は組合の活動としては、マスクの供給についてと、中央会などから届く補助金、助成金等の情報を伝達することが中心。

京菓子協同組合

相当ひどい状況で、売上は2割ぐらいでは。
お茶会は9月まで中止の連絡が入ってきている。春にあった数々のイベントも中止。贈答用の商品の比重が大きいので、「うちにいなさい」との状況下では全く売れない。土産もストップ、もちろん菓子教室もできない。
大きな店は支店を全部閉めて、本店だけ営業しているところが多い。当店も本店だけの営業にして、しかも個人のお客さんから注文があった分だけ作っている。
6月30日までは雇用調整助成金があるようなので、従業員に休業手当を払い、がんばろうという空気だが、いつまで続くかが問題。無利子でも借金をすれば返さねばならない。先が見えないのが一番つらい。

京都府生菓子協同組合

左京・南区などは、普段と変わらないという店も多い。
中京、下京などの商業地域、神社や仏閣の門前、花見の名所の近くの店などでは大きな減少となっているようだ。運転資金としてお金を借りたと話す組合員もいる。
当店(左京区)では地元のお客さんは少し増えている。入り口を開け、風を通す等、コロナ対策をして、営業を続けている。
卒業式・入学式の上用饅頭や、お祭りの赤飯などの注文はすべてなくなった。
柏餅がどのくらい出るのか読めない。地元に家族が帰ってきて、お孫さんを祝ってのケースが多いのだが、帰省が勧められていない、このゴールデンウィークの動きは読めない。少なめで準備している。

京都府菓子卸商業組合

組合内でも得意先のジャンルの違いなどにより、状況は異なる。
スーパーなどでは、大手メーカーの流通菓子は品薄になっている。コロナ状況下では急な増産もできず、主力商品に絞っているメーカーもある。
一方、観光地や道の駅、専門店や飲食店向けは厳しい。駄菓子店も、学校休校や店主の高齢化のため店を閉めているところが多い。
イベント企画も、ハロウィンの中止の案内がきた。

各社共通する大問題は、商談中止等、営業活動を縮小せざるえないことだが、仕方がない。一方、配送業務はこれは国民の皆様にとってのライフライン。
我々問屋業は、このライフラインを担っているという意識をもって、マスクや消毒等、社員の健康管理をしっかりやりながら、命を張って頑張っている。
その意義がもっと注目されてもよいのではないか。

京都飴菓子工業協会

京都の飴菓子は、京飴のブランドで観光客や百貨店での商売の割合が高いので、当組合員、どこも厳しいのではないか。全国百貨店の京都展に出店しているところも多く、その中止も痛い。
ホワイトデーもアウトだった。

京都半生菓子協同組合

当店では、2月から減少しており、3月で30%減、4月で40~50%減。
京都の半生菓子は、土産物やお使い物が多いので、どこも厳しいのではないか。デパートや京都駅や土産物店向けなどは注文がほとんどない。スーパーや生協向けはある。
お盆の注文はいまのところ来ている。

京都府洋菓子工業協同組合

組合員は地域の洋菓子店が多く、店頭には客は来ている。コロナ対策をして、17時で閉店しているところが多い。
ギフト用がなく、自家用なので客単価は大きく下がっており、3月、4月売上はダウンしている。ホワイトデーは、おそらく百貨店への出控えで、良かったところが多いのでは。

京都煎餅組合

売上は、当組合員の全体で半分くらいではないか。
観光土産やお使い物が多いので、百貨店や専門店、京都駅など販売先が閉まっている状況では、手の打ちようがない。観光地のいなり煎餅も大変だろう。一部、スーパーなどに売り先をもっているところは良いようだ。

京都郷土菓子組合

百貨店、京都駅の土産売場が縮小する中、厳しい状況だ。返品も多く、店頭セールをしようにも、お客さんが集まってはいけないと思い中止した。
オンライン販売は好調だ。新規の顧客がついている可能性があり、今後の営業にプラス材料かもしれない。

京都焼菓子組合

スーパーに卸す割合の多いところは悪くないようだが、当店では半減している。
雇用調整助成金の計画書を提出したが、きちんと給付されるか心配なところ。

京都八ッ橋商工業協同組合

八ッ橋業界は3月売上はほぼ6割マイナスと大きな影響を受けたが、更に4月に入り緊急事態宣言を受け、観光地にある直営店を閉める状況になっている。
また、八ッ橋を取り扱う土産店もほぼ閉まっている。
大手4社、従業員については普段ならば必要な人員なので、極力解雇はぜす、雇用調整補助金を申請し、雇用を守る方向。

京都米菓工業協同組合

当店では、3月は多少の減で済んだが、4月はかなりきつい。
京都駅売店などから返品がきている。自店やスーパー等の売上は減っていない。当組合員でも観光土産の割合が多いところほど大変ではないか。

京都府菓子工業組合青年部

現在、菓子教室など事業は、ほぼ中止になっている。
新型コロナによって受けているダメージについて、部員のヒアリングをしたいと考えているところだ。
また、部員の中からは、奮闘されている医療従事者にお菓子を寄付する事業をしたいという声も出ている。ほか、京都の菓子の詰め合わせを販売できないかとの声もある。

嵐山20200425