万葉集をテーマに京菓子展
有斐斎弘道館(濱崎加奈子館長、京都市上京区)では、11月2日(土)~11月17日(日)、京菓子展2019「手のひらの自然―万葉集」を開催している。
京菓子デザイン(デザインをもとに職人が実作)、茶席菓子実作(上生菓子)、工芸菓子実作(工芸菓子、干菓子など)の3部門、合わせて約600の応募作品の中から一次審査を通過した58品が展示された。
また、今年も特別会場として左京区の旧三井家下鴨別邸が用意され、一部作品が展示されている。
展示に先立ち、10人の審査員(門川大作、熊倉功夫、家塚智子、榎本信之、笹岡隆甫、鈴木宗博、中谷日出、廣瀬千紗子、山本壯太、濱崎加奈子の各氏)により、二次審査が行われ、各部門の大賞ほか、審査員が一作ずつ選んだ特別賞などが決定された。
11月1日(金)には、上京区の京都ブライトンホテルで表彰式およびシンポジウムが開かれた。
濱崎館長は「この京菓子展は、当館が再興した10年前より始め、今回公募展として6年目となった。今年は新元号『令和』の由来となった万葉集をテーマにしたところ多数の応募があり感謝している。京菓子は、日本文化を代表する芸術であり、学びの結晶であることを今回の作品を通して多くの方に知っていただけたら幸いだ」と挨拶。
茶席菓子実作部門の大賞は高井弓氏の「湧春」。
「石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも」の歌から、見事な造形を示した。
高井氏は「色の浮かんでくる歌を選び、さわらびと水のスピード感を表した。中の餡には青大豆も用いた」と話す。
高井氏はガラス工芸作家だが、味覚の上でも評価が高かったという。「茶道に親しむ中から、和菓子に興味をもち、制作するようになった。イメージから形をつくるのが面白い。和菓子は、究極のデザインだと思う」と語る。
京菓子デザイン部門で大賞の山中素子「もみち葉流る」は、錦玉羹で、紅葉の葉を包んだ作品で、意匠として面白い。実作は植村健士氏が担当した。
工芸菓子実作部門で奨励賞(大賞、優秀賞該当者なし)を受賞した「天の白雲」(幾世橋陽子)は雲平を用いて、白雲が重なるさまを表し、遠く思いをはせる気持ちを表現した。
幾世橋氏は仙台で和菓子店を営んでおり、3年前の同展の茶席菓子実作部門で大賞を受賞している。
会場では、呈茶席が設けられ、粟羊羹の「あかねさす」などが供された。老松店主の太田達氏が、細川ガラシャにゆかりのある品などしつらえを説明する一幕もあった。
京菓子展「手のひらの自然─万葉集」2019
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