㈱菓業食品新聞社

お菓子の業界紙

京都駅地下街ポルタ「きょうこのみ」

   

 *7月12日号より
 ㈱京都駅観光デパート(浮田秀輔社長)は、7月7日(水)、下京区の京都駅地下街ポルタ東エリアに菓子売場「きょうこのみ」をオープンさせた。以前の「京名菓」コーナーを大幅にリニューアルし、土産品だけではなく、少し贅沢な日々のおやつを意識し、デイリー需要の取り込みを図る。

 天狗製菓㈱や渡辺製菓㈱などデイリーにも強みをもつ京都の製菓会社が京都駅初出店。入口付近に新しく催事出店スペースを設置したほか、㈱美十の「ときのおかしや」では、月替りで同社が手掛ける全国のお菓子を展開する。あぶらとり紙の老舗「よーじや」が手掛ける「よーじやカフェ」ではテイクアウト販売をする。

 7月15日(木)には、出来たてテイクアウトを提供する「ポルタキッチン」が10店舗の規模でオープンし、4月より工事に入っていた同地下街東エリアのリニューアルが整った。今まで観光客向け店舗が多かった同エリアだが、コロナ禍の影響もあり、地元客目線で再構成した形だ。同社では、京都駅ビル1階は従来通りお土産を主力とし、ポルタは当面デイリー利用に重きを置きたいとする。

京名菓コーナー

 京名菓コーナーは面積を減らし、店ごとの展開はやめ、饅頭、羊羹、焼菓子など菓子のジャンルごとに1個ずつ選んで買えるようにした。単価はほぼ500円までのものが並んでいる。さらに季節商品のコーナーを作った。現在、各社の若鮎のほか、竹筒の水ようかんが並んでおり、食べ比べも出来る。
 担当者は「このコーナーを作るにあたり、京都市内の店を回って見てきた。かぎ隆三のクッキーなど意欲的な新商品もおいた。商品を固定するのではなく、入れ替えていく予定だ。以前、京都駅地下1階で銘菓が1個ずつ買える店舗を営業していたが、好評で閉店してからも問い合わせが多かった。一部そのコンセプトを採用している。自分用の京都土産としても利用していただきたい」と話す。

ときのおかしや by Bijuu

 ㈱美十は全国で手掛ける菓子を月替りで展開するときのおかしや by Bijuuを初出店した。京都に本社を構える同社は生八つ橋「おたべ」や、新しい京都土産の定番といえる「京ばあむ」、「洋菓子ぎをんさかい」などを有するが、全国に様々なブランドで事業展開してる。
 まずは、沖縄でバナナにこだわったスイーツを販売しているバナナパラダイスを紹介する。昨年8月に沖縄県うるま市に工場を竣工し、同9月に同店を那覇市の観光の中心地、国際通りにオープンした(沖縄も観光はダメージをうけ、今年5月に那覇の新都心・おもろまちに移動している)。現地のこだわりの卵などを使用した「バナナバウム」やラングドシャの「バナナラング」や、同社のパンブランド「別格」のクロワッサンを使用した「バナナと塩キャラメルバタークロワッサン」などを販売する。「当社には『おたべ』だけではなく、おいしいお菓子がいろいろあることを京都の方にも知ってほしい。また、旅行しにくくなっているので、各地の限定菓子で旅行気分を味わっていただきたい」とのこと。
*8月13日からは第二弾としておたべ本館の商品を販売中。

 初めて設けられたイベントスポットでは、7月27日(火)まで、鳥取県のすなば珈琲が出店している。県内にスターバックスコーヒーがない中、シアトルコーヒー店をということで注目された「すなば珈琲」だが、現在は鳥取県の有名ブランドとなっており、お土産商品が作られている。

天狗の横綱あられ

 天狗製菓㈱は数々のフレーバーの「天狗の横綱あられ」を販売する。
 同社は「横綱あられ」「ピリカレー」と、京都が誇るスナックを作ってきた。昨年、本社工場に販売スペースを作り、スーパーでは買えない限定フレーバーを販売し話題になった。商品には少し甘みがあり女性に人気という「白味噌仕立て」やお酒呑みの方向けに「山椒仕立て」。京都らしい「九条ネギ」やもちろん「激辛」もある。さらに、京都駅出店記念として2大商品を融合させた「天狗の横綱カレー」も用意し、ファンにはたまらないショップとなっている。
 石渡万里子社長は「京都で菓子を作っているものとして京都駅での販売は考えていたが、声がかかるまで待っていようと思った。今回『デイリー』に力を入れるいうことで、声をかけていただいたと思う。頑張っていきたい」と話す。

保津川あられ

 京都府亀岡市の渡辺製菓㈱が展開する「保津川あられ」は京都駅、京都市内に初出店となった。
 デイリー需要に向け、各種580円のあられの大袋(オープン記念で3袋で1300円)のほか、同社が精魂込めた「あられ一粒」全8種を揃えた。こちらは、丹波黒豆など厳選した素材を使い、丁寧に米の旨味を噛み締められるように少し固めに焼き上げている。セット商品も用意し、お土産やギフト需要にも対応する。
 同社は本社工場に霰館という直売所をもち、出来たての様々なあられのほか、作りたての和菓子なども販売し、フリードリンクで楽しめる人気スポットとなっている。そこでしか販売されていない「もちっとパイ」もこちらでも提供する。「霰館のミニチュア版のような楽しいお店にしたい」とのこと。

すみれさんのおやつ

「スミレさんのカステラ」

 すみれさんのおやつは、京菓子店の鶴屋長生が手掛ける新ブランド。
 同社の大道学美社長が台湾カステラを参考に開発したカステラを中心に販売する。京菓子店としてカステラは作ってきており、白味噌入のものや、米粉を使用したものなど工夫もしてきたが、洋菓子となる「台湾カステラ」の開発には苦労したという。ふっくらと口溶けよく、その形が維持できるようにするため、多くの試行錯誤を重ねた。フレーバーは「プレーン」「抹茶」「チョコレート」「ミルクティー」の4種類を用意。今まで、抹茶やほうじ茶は、紅茶の香りがよい。可愛らしい焼印を押すところが京菓子店らしい。
 また、別売のソースがあり、かけることで味の変化が楽しめる。チョコレートにオレンジのソースなど面白いとのこと。また、葛アイスバーも販売する。本店では抹茶や黒糖など京菓子店らしいフレーバーだが、こちらでは各種フルーツのフレーバーで展開する。
「私どもの規模のお店にとって、コロナ禍の厳しい時期に出店は勇気のいることだが、挑戦するしかないとの思いで出店した」と話す。

果実とわらび

「果実とわらび」

 京西陣 菓匠 宗禅は新ブランド果実とわらびで再出店する。フレッシュフルーツと白あんを、フルーツわらび餅で包んだ大福6品(いちご・キウイ・パイナップル・みかん・マスカット・バナナ)を展開するが、これは山本佳明店主が10年の思いを掛けて実現した商品だ。
 この新商品のポイントはなんといっても「菓皮(フルーツわらび餅)」。ここにたどり着くまでには山本店主は「凍りわらび餅」「蜜わらび」という2つの新商品を編み出している。わらび餅にフルーツを練り込むのに通常のやり方では、熱で味も香りも飛んでしまう。「手揉み急速冷凍製法」を開発し、フルーツの素材感を生かした「凍りわらび餅」を完成させた。さらにそこに液状の蜜やソースを入れても破れないようなわらび餅の生地を試行錯誤し「蜜わらび」を開発した。この「菓皮」とフルーツに合う、主張しすぎない白あんづくりにも苦労を重ね、やっと完成させたのが「果実とわらび」となる。
 今回の出店に関して、クラウドファンディングを活用したことも注目される。長く続くコロナ禍で、観光客が激減し主力店舗だったポルタ店も大きく売上が落ち、資金繰りも厳しく、再出店が厳しい状況だった。しかし従業員の雇用を守るためと、新商品をお披露目したいとクラウドファンディングで訴えたところ、約250人から300万円を超える応援を受けることができた。
「果実とわらび」は「きょうこのみ」限定商品。また、「京都蜜わらび」「半熟松風」などのオリジナル性の高い商品も販売する。

よーじカフェ

「お茶のクレープ ミルクティー」

 あぶらとり紙の老舗よーじやが手掛ける「よーじカフェ」は3店舗目となり、お茶が楽しめる2種類のクレープを提案する。トレードマークが映える面白いデザインだ。一見食べ歩きしにくそうだが、大丈夫とのこと。このクレープで地元の方にも「よーじや」に親しんでいただき、コスメ商品の販売にもつなげたいと話す。

 FUMON AN(普門庵)は、清水で営業を開始して約10年、こちらが2店目になる。主力商品は茶師10段・酢田恭行氏とフランスMOFのパスカル・モリネス氏が監修した、抹茶とフランス産発酵バターを使用したフィナンシェ「京フランス」。「清水ではほぼ観光客。こちらでは地元の方の手土産需要も掴みたい」と話す。

 寿庵が手掛ける四条烏丸洋菓子舗京都VENETO九条ねぎ京えび せんべい処 本家佳長も再出店する。人気のバターサンドプレスサンドは、京都駅2階に続いてこちらにも出店した。また、満月はブースを構えて「阿闍梨餅」のほか、羊羹の「京納言」も販売する。

八ッ橋

 八ッ橋4ブランド、聖護院八ッ橋総本店井筒八ッ橋本舗本家西尾八ッ橋京銘菓おたべは、お土産エリアにわかりやすく配置された。
 井筒八ッ橋ではこしあんの八ッ橋を初めて提案。顧客から要望が多かったという。不二家とコラボしたミルキーの販売も続けており、こちらは幅広い層から好評を得ているとのこと。

 福寿園は、スマホを使い、同社のお茶の中でその人にあったお茶をお知らせするサービスを始める。新型コロナウイルス感染状況の改善を見て、試飲のサービスをしていく予定だ。

 4月ゴールデンウィーク前の緊急事態宣言以来、休業が目立っていた京都駅エリアではほぼ全店営業を開始することになった。今後、どのような形で観光客や利用客を受け入れていくのか注目していきたい。