㈱菓業食品新聞社

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京菓子展2020 禅 ZEN

   

有斐斎弘道館にて。手前の作品は萩のゆき「一即多、多即一」

 有斐斎弘道館(濱崎加奈子館長、京都市上京区)では、11月1日(日)~15日(日)、京菓子展2020「手のひらの自然―禅 ZEN」を4会場で開催している。
 公募展として7回目となるが、新たに2カ所のサテライト会場が設けられたほか、京菓子展限定菓子の販売、冊子発行など、充実した展覧会となっている。

 約6000点の応募作品の中から、一次審査では京菓子デザイン部門(デザインを提出・それを職人が菓子に仕上げる)で14作品、茶席菓子実作部門で36作品が入選し、各会場で展示されている。
 濱崎館長や門川京都市長ら12人による二次審査が行われ、10月31日(土)にオンライン上の表彰式で大賞や各審査員賞などが発表された。

 今年のテーマは「禅」とした。
 抽象度の高い難しいテーマであるが、同館の太田達代表理事は「禅は、京都における臨済宗五山の影響を考えるまでもなく、庭、絵画、茶道など文化・芸術の中心を担ったもの。600点もの応募があり、作品の質が高かったことは誇るべきことだ」と話す。

 

松下荘太郎「心づく」

 実作部門の大賞は松下荘太郎「心づく」。
 禅語「両忘」より。二者択一を超えたところに新しい発想が生まれるのではないか、とする。餡は小豆と白手亡と2つのさらし餡を使用し、外のういろう生地も白と黒2色、真ん中に一つ金箔をおいた。

桑江めぐみ「糸ひかり」

 デザイン部門の大賞は桑江めぐみ「糸ひかり」。
 禅語「一雨潤千山」より想を得た。一雨であらゆる塵芥を洗い流したかのような朝を表現。自然界を六角形で表したのが面白い。シンプルに見えるが菓子にするのには大きな苦労があったという。

 濱崎加奈子賞は、萩のゆき「一即多、多即一」。縄文人が食したであろう、ヤブツルアズキ(野生種)と、長い歴史で育てられた品種、能登大納言小豆(無農薬自家栽培)を一粒ずつ配し、エゴ(能登産海藻)を用いて固めた。石川県出身の鈴木大拙の著作にもある言葉が、その土地の素材を用いて造形された。濱崎館長は「とても美しいフォルムにお菓子の原点が表されている。見た瞬間心を打たれた」と話す。

 今回、京菓子展限定菓子として、「無有( MU/YU)」、「石庭」の2種の落雁のセットを販売している。

「京菓子のよみ方」

 濱崎館長による「京菓子のよみ方 手のひらの自然―京菓子展の作品から」という冊子が発行された。
 京菓子の読み方として、①物語を食べる(メッセージ)、②抽象を食べる(謎解き)、③時間を食べる(色と光)、④耳で食べる(銘)という4つの視点を提案。実際にこれらの視点から丁寧に作品を読み解き、京菓子の世界の奥深い面白さを伝えている。

 会場は、有斐斎弘道館、 旧三井家下鴨別邸のほか、サテライト会場として、ジェイアール京都伊勢丹2階特設会場、京都御苑中立売休憩所が用意された。京都伊勢丹は、11月4日(水)〜10日(火)開催で、受賞作から4作品と限定菓子の販売も行われた。

京菓子展2020「手のひらの自然―禅 ZEN」
https://kodo-kan.com/kyogashi/